2011年02月02日

ありのままに

その昔、ある高僧が病に伏し、いまわの際を迎えようとしていた。
弟子たちは、和尚のまわりに集まって泣いていた。「今のお気持ちは」と問うと、和尚はひと言、「死にとうない」とつぶやいた。
深遠で尊い言葉を期待していた弟子たちは、いぶかってもう一度問い直したが、やはり和尚は、だだをこねる子どものように「死にとうない」。
本当のことを言ってくださいと尋ねると、返ってきた答えは、「ほんまにほんま」だった。

和尚は、弟子たちに高いところから説き聞かせようとせず、人間の弱さ、愚かさをありのままに示したのだった。

(文・たかたまさひろ)
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